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さすらう若人の歌 作曲考 … マーラー作曲  1/5  2/5  3/5  4/5  5/5     編曲考

さすらう若人の歌 作曲考  /5

 T 調性の配列
 U 和声上の特長
 V 旋律上の特長
 W カデンツと旋律
   … 保続音(状態)とモチーフに注目して、構成を見る   
第1曲 第2曲 第3曲 第4曲

          注1 { }は移動ド表現です。 {ミレドレミーラーミー}  大文字は、モチーフを表現
          注2 [ ] は固定ド表現です。 [ラソファソラーレーラー]
          注3 【 】は練習番号と小節を示す。   【練11 111】は練習番号11で最初から111小節目
          注4 「保続音」とは、強拍、或いは、高頻度で出現する同音の(保続音)状態。
          注5 オーケストラ譜 音楽之友社「OGT1251」をベースに説明。

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T 調性の配列
                        原曲key  

第1曲 彼女の婚礼の日は        ヘ長調(ニ短調) FMaj(Dmin)

第2曲 朝の野原を歩けば        ニ長調       DMaj

第3曲 燃えるような短剣を持って   
ヘ長調(ニ短調) FMaj(Dmin)

第4曲 彼女の青い目が         ト長調(ホ短調)  GMaj(Emin)

(1) 第1曲から第3曲まで、同主調
   … 第1曲 ニ短調風、第2曲 ニ長調、第3曲 ニ短調

(2) 第3曲は、第4曲に対して、全体として「解決」 (D→G)。
   … 全体のみならず、第3曲終了部からのプロセス(カデンツ)は、
      第4曲第1主題を明確なターゲットとして(ドミナントモーションして)いる。 
      参照 「U 和声上の特長(5)」

U 和声上の特長
(1) 保続低音(根音または属音)状態の多用で、調性の変化(転調感)を弱体化し、同時に統一感の醸成
                                                      {CとG(AとE)の保続}
… カデンツは、(根音の保続音は、その全体がトニック、属音の保続音は、その全体がドミナント等)
  多くの小節数を1単位として固定。

  通常の独立和音的カデンツ進行は、主に、経過句の箇所にサブ的に出現。
  ただし、第3曲と第4曲第1主題部を除く

  保続音を使用した小節数は、全体(371小節)の7割をしめる。
(2) Yの活用と、第3音の不使用により、調性感の確定を避け、流動化。
… 長調{CMaj}でありながらY{Amin}を多用し、短調感を醸成。

  また、特に、短調感の強い第3曲で、第3音の不使用。

(3) 導音の不使用により、調性感の制御を図り、導音使用時の効果最大化を図る。

… 第1、2、4曲では、導音を避け、第3曲で多用。

  短調か長調か特定出来ずに推移して行く。それだけに、第3曲で、オーソドックスな短調が引き立つ。
(4) 高揚感の高い、第3曲は、クライマックス演出を図り、定番通り、黄金分割地点に位置している。
… 第3曲の出だしは、全体371小節の224小節目(60%)。黄金分割比は61.8%。

  また、導音多用に加え、独立和音的カデンツ進行による転調感醸成も特長的である。
(5) しかし、その高揚感の収束方法として、目立たずに、その第3曲全体を、第4曲に解決させている。

… @ KeyがD→G(属調→主調の関係)

    第3曲ニ短調(key in Dmin)→第4曲ト長調(key in GMaj)のY(Emin)は「解決」する典型とは言えない。

    しかし、展開していく中で、第3曲の最終音Ebが、ユニゾンで終了し、
    第4楽章の出だし音E{ラ}との音程関係がE Aeoliann(ホ短調音階)の「導音」{ソ#}となっている。

  A このEbは、第3曲、最終3小節の間、保続低音でもあり、「導音」の役割を、高めている。

  B 一方、「解決」する側の、第4曲第1主題提示の17小節間は、独立和音的カデンツ進行。

    全曲を通じて、激しい第3曲以外は、ここでのみ、主題提示に際し、保続音を使用せず、
    (導音により解決して行く)素直な動きに委ねている。

    穏やかな主題(の旋律的変化)に対して、自然な和音づけとなっている。

V 旋律上の特長    
               モチーフだけで全曲が構成されている 
               {執拗なまでのソドレミ(ミラシド)づくしと、だましのファミ}
V-@ モチーフと旋律    

     歌(詩)の構成と旋律の情緒性のみならず、理論的構成が、緻密で堅固
B
(1) 旋律線は、徹底して導音(Z度{ハ長調ではシ、イ短調ではソ#})を避け(使用する際も、経過的使用に留め)ている。

   調性(短調、長調)を確定させない意図を感じさせる。(第1モチーフ@ABDE

   これは、第3曲第1主題(導音を多用し調性を強調した旋律、第1モチーフC)をターゲットとし、
   差別化と、 クライマックス感最大化に、照準を合わせたと考える。
(2) 第2モチーフ(下向順次進行2音、下向半音進行2音)は、
   第1モチーフ(完全4度(5度)+上向順次進行3音)からなる旋律に対峙した動きをつくり、
   旋律上、和声上の特長を醸成している。
(3) また、各モチーフは、模倣しながら、「緩急」「動と静」の両極で使用されている。

   たとえば、痛烈なインパクトを持つ「O weh!」に代表される動きと、
   片や、落ち着いて静かに終わる第1曲、第2曲の最終旋律線は、いづれも、第2モチーフである。
(4) 全体の「終」である、第4曲の最終旋律は、第1モチーフと第2モチーフの2重奏(融合)になっている。

   歌 (詩) の構成と旋律の叙情性のみならず、理論的構成も緻密に対応している。
(5) 音律は、Ionian(Aeolian)のみ

    どこか、民謡調なメロディを感じるが、他の音律は使用していない
(6) モチーフ以外の旋律は、@順次進行、A半音進行、B分散和音、C若干の転位音で構成

   モチーフ以外の、主要旋律が存在しないともいえる。
V-A モチーフの分類と構成。

     大きく3種類に分類したが、基本的には、
     2種類のモチーフで、全体(全4曲)が成立しているといっても過言ではない。
(1) 第1モチーフ …「完全4度(5度)+上向順次進行3音」 「X度+T度U度V度」(トニック)
 
                                                               {ソドレミ、ミラシド}

   構成音中で、経過音、1音(U度){レ、シ}を除けば、T、Yの分散和音{ソドミ、ミラド}であり、
   和声的には典型的なトニック(感)を形成。但し、除く第1モチーフC) 

 第1モチーフ@ 第1曲 第1主題の暗示【練0 1】 旋律の上下、左右反転 
                                                      {ミレドレミラミ→ラミラシドシラ→ミラシド}
                                                      {ミレドレミラミ→ドソドレミレド→ソドレミ}

 第1モチーフA 第1曲 第1主題。【練0 5〜8】 旋律の上下、左右反転、同度の重複音を削除              
                                                {ミレドレミー(ミー)ラーミー→ラミラシドシラ→ミラシド)}

 第1モチーフB 第2曲 第1主題 【練8 2〜4】                              {゙ソドレミファソー→ソドレミ}
 第1モチーフC 第3曲第1主題 【練19 5〜6】                                {ソ#ラシドレ(ミ)ッミー→ミラシド}
   ここで、{ソ#}は、導音である
   しかし、根音は、暗黙で存在。(根音を{ミ}とする{V9}の根音省略形としての{ソ#}の存在)

   また下記より、定義付けることも可能。
   第3曲 前奏と第1主題を結合し、同度と導音をはずす。【練19 1〜6】

   … 旋律は、前奏部4小節で、主音、属音{ラ、ミ}を、同時に強拍し、5度の和音を繰り返すが、
     その和音と対になって、弱拍から(導音{ソ#}を先頭にして属九根省分散和音からなる)ドミナントモーションを繰り返す。
     続いて、第1主題が、導音から始まる短調音階を順次進行で上昇【練19 5〜6】。                        
                                                    {ミラ・ソ#ラシドレミー→ミラシド}
    →さらに、旋律線は、第1主題提示後、短調音階を順次進行下向【練19 7】。
     ここ{ソドードシラソファー}は、「完全4度+順次進行3音」ではあるが、下向進行である。
     第1モチーフの模倣範囲を超えている。
     しかし、そこで出現する低音群の対旋律{ミラシドレミー}は、第1モチーフ{ミラシド}そのものである。
     この対旋律が出現したという事実は、その前の、6小節に及ぶ「長さ」もさることながら、 
     れっきとした第1モチーフCの存在を明示するものである。

 第1モチーフD 第4曲第1主題 唯一、同時の伴奏(属音のユニゾン)を結合 【練26 1〜2】 {ミとラシドードードド→ミラシド}
   この再現時は、ティンパニーの旋律(第3モチーフ@)を挟み、【練27 17〜18】
   典型的な第1モチーフとして出現。                              {ラミラミ・ラシドードードド→ミラシド}
 第1モチーフE 第4曲 第2主題。【練29 41〜42】 同度音を削除         {ソド(ドードードー)レミミーソーソー→ソドレミ}
(2) 第2モチーフ … 「下向順次進行2音」 (長調、短調の W度 V度 {ファミ} {レド} 等)
   第2モチーフは、全曲を通じて、概ね、第2主題を構成しており、第1主題を構成する第1モチーフに、対峙する。
   また、全曲を通じて、ドミナントモーションの最大効果を引き出すために様々な動きを行う。

   … 旋律線は、属和音の第7音が、主和音に解決する音(限定進行音)をたどりながら、
     かに見えて、和音は、解決しない進行を行う(実は、トニック、サブドミナント等)ことで、ドミナントモーションへの期待感を高める。
     {ファ→ミという旋律の動きは、和声的にG7からCMaj(Amin)への解決を感じさせるが、
     3全音を形成しない進行を形成。
     ファ→ミだが、実は、Dmin系だったり、CMaj(Amin)系だったり}

     また、旋律線は、限定進行音ではない、半音進行2音を活用し、転調感の中で、
     限定進行音と錯覚を起こさせ、ドミナントモーションを期待する役割を果たす。

 第2モチーフ@                                                  {ファミ、レド}
   長調「W度V度」、短調「U度T度」{ファミ、レド}の旋律線(限定進行音)だが、 和声的にはドミナントモーションではない 。
   例  W→X oW→T   T(転位音あるいは、順次進行上の経過的なファ)    W7 →T
 第2モチーフA                                                  {ファミ、レド}
   第2モチーフ@と同様(限定進行音)だが、3全音の解決を形成するまでに至らない疑似ドミナントモーションをする。
   例  T(主音)上のX→T
 第2モチーフB                                                  {ファミ、レド}
   第2モチーフ@と同様(限定進行音)で、(3全音を形成する)ドミナントモーションする。
 第2モチーフC                                                    {擬ファミ}
   短2度(半音進行)の2音
   例  oW→X7 {Fmin→G7}    oW→T{Fmin→CMaj}
(3) 第3モチーフ … 「完全4度(5度) 2音」  
   上記(1)の前部が発達したもので、第3主題を形成。
 第3モチーフ@  同時保続音間を始めとして、出現する、根音と第5音および、その繰り返し。     
           {ラミラミ(ドソドソ)やミーラーミー(ドーソードー)}                      {ドソ}{ラミ}{ドソドソ、ラミラミ}
 第3モチーフA  5度(4度)音程を意識的に接続した旋律線(同度音、転位音削除)。     
           {ドードー・ソーラソー・ソーラソー} {ソソッソソー ドードド} {ソーソソーソ ドードドー}           {ドーソー、ラーミー}
参考  各曲のスタートと終わりをモチーフからみる。  
   第1曲は、第1モチーフ@で始まり、第2モチーフAで終わる。

   第2曲は、第1モチーフBで始まり、第2モチーフBで終わる。

   第3曲は、第1モチーフCで始まり、終わりはモチーフを見かけないが、細かい分散和音のパッセージで終わる。
         和声的には、14小節に及ぶ保続音Bb{ソ}が3小節に及ぶ保続音Eb{ド}に解決するかのように、終わる。

   第4曲は、第1モチーフDで始まり、第1モチーフDと第2モチーフAの2重奏で終了。